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イノベーションあふれる地域へ 学生、企業、自治体一体で「挑戦」する人材を! InnoDrops代表理事 小山直子さん

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 地域からも挑戦する人材を育て、イノベーションが生まれる基盤を創りたい。中高生や大学生、企業を対象に、社会課題の解決策を練ることなどを通じ、人材育成・コミュニティ形成を図る事業を展開する。目指すは、「挑戦が循環」する地域システムの構築だ。
 

アントレ教育「STEAMDAYS!!」と「SANDlab」が中核

--事業内容を教えてください。
小山さん 若者の「やってみたい」という熱量を起点に、地域の共創を生み出す人材育成・コミュニティ形成事業を展開しています。
具体的には、中高生の起業家精神(アントレプレナーシップ)を育む「STEAMDAYS!!」と「SANDlab」という二つの事業を中核に据えています。
 「STEAMDAYS!!」では、中高生が社会課題の当事者らにインタビューをしながら課題を深掘りし、解決策のプロトタイプまで創りきる実践の場を提供しています。
一般的な探究プログラムと大きく違うのは、伴走力の育成プログラムも同時に開催している点です。中高生の伴走には、大学生や地域企業の若手社員らがつきます。大学生や若手社員にコーチングスキルやデザイン思考を研修としてインプットし、そこで学んだことを中高生に伴走しながら実践し、アウトプットする場としても提供しています。地域企業・大学・自治体が連携し、地域の挑戦と経験が循環するプログラムとして運営しています。
 中高生がDAO上(インターネット上の分散型自律組織)で起業を仮想体験できる「SAND lab」という事業もスタートさせました。中高生と企業が組み、登記からMVP(必要最低限の機能を備えた製品)の開発、事業クロージングまで経験しながら共創事業を生み出します。
 
--これまで「STEAMDAYS!!」ではどんなことをしましたか。
小山さん 2025年度は精神・発達障害をテーマにしました。まず「障害はその人にあるのではなく、その人と社会の間にある」という考え方を高校生らにインプットし、アート特化型の就労継続支援に取り組む事業者の協力を得て、障害のある当事者にインタビューしました。その中で、「作品が評価されるのはうれしい。でも『障害者なのにすごいね』と言われるのは嫌だ」という言葉があり、ある高校生3人のチームは「人と違うと言われることで孤立感を感じているのでは」というインサイトを感じ取りました。そこから「孤立感の反対は共感ではないか」と仮説を立てた結果、解決策として「交換日記アプリ」を生み出しました。
 
 協賛企業からは「中高生がここまで“考え抜くプロセス”を実践していることに驚きました」「(伴走した)若手社員にとって『挑戦を支える立場』で関わったことは、日常業務では得られない貴重な経験となりました」といった声をいただきました。
 
--創業のきっかけは。
小山さん 夫の仕事の関係で22年10月に唐津に移り住んだことが、人生の転機になりました。唐津の特に10代の若者の挑戦機会の少なさや、過去から変わらない価値観に機会格差を感じました。
そんな時に共同創業者になる唐津出身の田中綾さんに出会い、その年から学生向けの事業を始めました。その後、現役大学生で地元佐賀に強い想いと熱量をもつ梶原漱己さんをはじめ、ソーシャルビジネス経験者や、中小企業の新規事業経験者など、多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まり、それぞれの専門性を活かして事業を推進しています。
 

地元企業の学び、人材研修にも

--どんな未来を描いていますか?
小山さん 私は「誰かに決められた未来」ではなく「自分で選び、自分でつくる未来」をつくりたいです。失敗しても、その経験値は次の未来をつくる価値になります。大事なのは目先の成功ではなく、自分の意思で物事を決め、挑戦することです。若者の熱量を起点に、地域企業や地域の人々を巻き込んで、「未来は変えられると誰もが思える社会」を実現したいと考えています。
 
「地元は好きだけど、働くなら外に出る」という学生たちの話を聞くと、地域で経済や伝統を支えている地元企業が就職の選択肢に入りにくいジレンマを感じます。だからこそ、地元企業が地域や学生との距離の近さを活かし、「一緒に学ぶ側」として能動的に関われる形をつくりたい。「STEAMDAYS!!」で伴走したり、「SAND lab」で共創したりしながら学ぶ。そうした関係性を地域の中でエコシステムとして回し、企業の人材育成が地域の次世代育成につながる循環を根づかせていきたい。それが当面の大きなビジョンです。
InnoDropsは、「Inno(Innovation=革新)」と「Drops=雫」を組み合わせた造語です。小さな革新の雫が波紋を広げ、大きな変化や創造性を生み出すような社会を実現します。

小山直子さんプロフィール

1983年埼玉県出身。2006年千葉大学卒業。NTTコミュニケーションズ株式会社(現NTTドコモビジネス)に入社し、ICTコンサルや新規事業開発などを担当。22年に唐津市に移住し、24年から一般社団法人InnoDropsの代表理事。株式会社ユーザベースでリサーチコンサルも務める。
 

企業概要

一般社団法人InnoDrops
事業内容:人材育成、コミュニティ形成
所在地:佐賀県唐津市
創業:2022年(法人設立は2024年)

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